【卵巣腫瘍を妊娠中に発見・手術】夫が綴る妻の治療・療養ブログ

私には、もうすぐ3歳を迎える、イヤイヤ期のピークを過ぎた2歳10か月になる息子がいます。

歳の近い妻と晩婚からの高齢出産、しかも初産。出産に立ち会い、入院から分娩までの想像を絶する凄絶な32時間であったことを記憶しています。

今では、息子とも少しずつ意思疎通ができるようになり、笑って泣いてグズッて甘えて、毎日元気に駆けております。

ですが、妊娠中に大きな手術をしなければいけませんでした。

それは、「卵巣腫瘍」です。

今回の記事は「【卵巣腫瘍を妊娠中に発見・手術】夫が綴る妻の治療・療養ブログ」と題しまして、同じように妊娠中に手術される方、これから手術される方、かかる費用、そもそも卵巣腫瘍とは何かを筆記させていただきます。
私の分からないこと・知らないことは徹底リサーチ、読者様の参考になれれば幸いです。

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懐妊と卵巣腫瘍との診断

結婚から6年目に入り、半年ほど経った2月のこと、検査薬に陽性反応が出たために産婦人科へ。
腹部の超音波(エコー)検査で懐妊と同時に卵巣が腫れていることを指摘、卵巣腫瘍と診断されました。

腫瘍の大きさは5~6cm程度。「早急に手術が必要」という状態ではなく、主治医も「出産後でもいいし、手術をしてもしなくてもどっちでもいいよ」と手術の決断に困る返答で、「簡単に済むよ」とも「このようなリスクがあるよ」とも多くを語ってはくれません。
ただ、腫瘍部分の切除だけですむか卵巣自体の摘出になるかは、開腹してみないと判らないとのことでした。

結婚から足かけ6年、想いが届き授かった新しい生命に嬉しさと感動・心配と不安が入り交じるカオスな状態に。

卵巣腫瘍(妻のケース)ー
卵巣は、最も腫瘍が生じやすく、また、様々な種類の腫瘍ができやすい臓器です。
卵巣腫瘍は、卵巣嚢腫(のうしゅ)と充実生腫瘍に分けられ、卵巣腫瘍の80%は卵巣嚢腫を占め、その内90%は良性であると言われています。
妻のケースは、人体の元となる胚細胞にできるもので、歯や毛髪などの組織が含まれたドロドロした物質がたまるものでした。
参考元・詳細:卵巣の腫瘍

当時、初めて聞く病名に、私も妻も「腫瘍なら摘出しなければいけない」と思い込み、お腹の赤ちゃんのことを考えたらだんだんと不安が膨らみ心配になるばかり。

「胎児への麻酔の影響はどうなのか」、「手術は帝王切開みたく10cm程度の開腹と言ってたが、そもそも腹を切ってもいいのだろうか」、「術後に鎮痛薬は服用できるのだろうか」と…。

ただ、「手術は安定期に入ってからである」、「胎児が成長すると子宮が大きくなり視野が狭くなるため手術が難しくなる」、「卵巣が根元からねじれると強い痛みを伴い、緊急手術が必要になる」などを理由に人生初の手術を決意します。

茎捻転(けいねんてん)ー
茎捻転とは、卵巣が腫れて卵巣自身の重さが増しているため、動いた際に卵巣が周囲の欠陥や組織を巻き込むように捻じれてしまう状態のこと。茎捻転を起こした場合の主な症状は、強い下腹部の痛み。
捻じれかけても元に戻ることもあり、その場合いったん痛みは治まりますが、完全に捻じれてしまうと卵巣に血液が届かなくなり壊死(組織が腐ってくる)を起こします。激痛となって救急車で運ばれるケースも珍しくないそうです。

自覚症状

自覚症状は、ほぼなにも感じなかったそうです。

ですが妊娠前のこと、就寝中に「お腹が痛い、痛すぎる」と起きることが2度ほどありました。

トイレに行っても改善されず、普通の腹痛とはどうも違うようです。

朝一番で内科で診てもらい、「婦人の病気はないの」と問われたそうですが、思いあたる節はなかったので「ない」と答えると、急性腸炎と診断、抗生物質を処方してもらい様子見とのことでした。

その日のお昼過ぎには痛みもほぼ落着き、「なんだったんだろうねー」と怪訝な表情を浮かべていたのを記憶しています。

卵巣腫瘍の症状ー
初期段階では自覚症状が乏しく、内容物がたまったり卵巣が肥大して気づくケースが多いようです。また、私の妻のように懐妊と同時に指摘されることも少なくないようです。

卵巣が大きくなると、腹部膨満感、下腹部痛、頻尿といった症状が現れるようで、時に腫瘍が破裂したり、茎捻転が起こると突然の強い下腹部痛が出現します。

今思えばあの腹痛は、卵巣が根元からねじれては戻るという事象が生じていたのかもしれません。

周りの反応

まずは、私の両親と妻の両親に妊娠と卵巣腫瘍の報告をします。

はじめに妊娠を報告。半ばあきらめていたみたいで、喜びよりも驚きの方が大きく、その後、瞳にじんわりくるものを察することができました。

ふた呼吸ほどおき、卵巣腫瘍の報告をします。

私たちの両親も思うことは同じで、胎児への麻酔の影響、腹を切れるのか、鎮痛薬は服用できるのかと心配と不安でなんとも言えぬカオスな空気に。

それでも、手術をしないリスクの方がはるかに大きく、お腹の子を第一に考えれば手術に臨まなければいけない旨を伝えたのでした。

手術当日

最近の卵巣手術は、体への負担が軽い腹腔鏡下手術が行われていますが、妻は開腹です。
そちらの病院がそういう術式なのか、胎児がいるから開腹にしたのか、今となっては知る由もありません。ただ、目視の方が素人ながらに確実なのではとも思います。

なんの知識もない私たち夫婦。「何で?」と先生に問うこと自体が恐れ多いと強く思っていたため、信頼を寄せ全てをお任せしていたのです。
まさかこうしてブログに綴る日が来ると分かっていたのなら、根ほり葉ほりと聴き取りをしていたことでしょう。

手術当日、ストレッチャーで運ばれる妻に微笑みかけ「頑張れ」と声をかけると、「行ってきます」と笑顔で応える妻。
「1時間ほどで終わります」と告げる先生に、「お願いします」と深々と頭を下げ待合室へ。

待合室では、交通事故を起こし、集中治療室で治療を受ける息子さんの両親と思しき夫婦、不安げな表情の初老の男性を横目に、〝もらい不安〟をしないよう難しい手術ではないからと心に言い聞かせ、偽余裕の表情を浮かべる私がいました。

1時間ほどが過ぎ、そろそろかと待っていましたが、一向に出てきません。
「何かあったのではないのだろうか」と不安が頭をよぎります。

終わってみれば、1時間30分くらいの手術でしたが、1時間を過ぎてからの30分が長いこと長いこと。

手術室から出てきた先生に「何かあったんですか?妻とお腹の子は無事なんですか?」とドラマで観かけるシーンを私が素で再現。
取り乱し慌てふためく私を見て、「どうしたの?」と言わんばかりの表情で「大丈夫ですよ」の言葉に安堵しました。…と同時に、だったら最初から「1時間30分程度」と言ってくれればよかったのにと思ったことは言うまでもありません。

手術事例

手術方式は、横向きに体を丸め背骨の中の脳脊髄液の中へ麻酔薬を注射する下半身麻酔、意識があるなかでの開腹です。

広い室内に執刀医さんを含め8~9人は居たとのこと。腹部にカーテンのような幕が下ろされ向こう側は見えない状態に。

身体に繋がれた機器からは血圧やお腹の子の心音、手術道具のカチャカチャという音、緊張を解くためか向こう側では軽く会話をしながらの施術だったそうです。

やがて、お腹を切る「ジジジ…」という音と共に焦げた臭いが鼻をつきます。

本人いわく、「麻酔を打つときは〝ドーン〟とする結構な痛みがあった」とのこと。そして、手術中は、「痛みはぜんぜんなかったが、お腹の皮膚を手でグーッと開かれる感覚があった」そうです。

途中、先生が「あ…」と声をもらしたのを聞き逃さなかったらしく、一瞬で不安が押し寄せ緊張がはしりました。術後に「あ…」の真意が判るのですが、その場では中断することなく手術は進行、幕の向こう側では慌ただしい雰囲気はなく、軽い会話が続いていたので、「大丈夫なんだ」と自分に言い聞かせるころに手術は終わりました。

「中のものを見る?」と見せてくれたのは、お風呂の排水溝に集まるドロドロとしたこぶし大ほどの髪の毛の塊。「ごめんね、腫瘍のブヨブヨとした脂肪を切り離すときに潰してしまったよ」と続けます。これが「あ…」の真意だと判り、気持ちが緩みます。

そして、腫瘍部分だけを切り取り、卵巣を残すことができたと報告を受け〝ほっ〟と一息、「エコーで赤ちゃんを見てみよう」と胎児の様子を確認、何ら問題等もなく、拍動する心臓がはっきりと確認でき、心の底から安堵し胸を撫で下ろしたそうです。

術後~退院まで

当時、コロナが蔓延する前でしたので、仕事の休暇をもらい翌日に病院へ。

そこには、今は亡きお笑いタレントの志村けんさん演じる「ひとみ婆さん」がいました。
体を起こそうにも手が震えて思うように動かせず、「ふんふん、ふんふん」してる妻がいたのです。

私の開口一番「ひーちゃんみたい」の言動にツボッてしまい、笑いたくてもお腹を切ったところが痛くて笑えない、それを見てたら余計にひーちゃんに見えて、「ひーちゃん大丈夫」の問いかけにさらにツボッてさすがに怒られるという…。

また、妻が寂しい思いをしないようにと、妻が独身の頃から大切にし添い寝しているというクマさんのぬいぐるみを持っていったのですが、「恥ずかしいからそんなもの持ってこないでよ」とまた怒られ凹む私という…。

術後はスパルタです。

子どもを宿しているからなのか、その病院がそのような方針なのか、日本の医療全体で邁進しているのかは分かりません。術後は安静かと思いきや、麻酔がきれたらとにかく歩けと院内を歩かされます。…それがまた点滴を持って歩く姿がひーちゃ..

ベットから起き上がるのさえ困難なのに、「寝ていてはダメ、とにかく動き回れ」と急かされるそうです。中でもキツかったのがトイレ、点滴をしてるからトイレの頻度が増すそうで、起きて歩いて座っての地獄のループだったそうです。

さらに妻を苦しめたのは、鎮痛剤(痛み止め)を飲まなかったこと。というのも、お腹の子を想い「飲んではいけない」と思い込んでしまっていたこと。
実際は、飲んでも大丈夫な鎮痛剤があるそうなのですが、術後の夜、麻酔がきれると眼ることさえできないほどの痛さに苛まれ、発熱とあまりの激痛に吐いてしまったといいます。それでも薬なしで後の入院生活も耐え抜きました。

…ほんと女性って強いですね、感服いたします。

そんなこんなで1週間ほどで退院。
お世話になった方々に頭を下げ、妻とお腹の子、クマさんのぬいぐるみと病院を後にしました。


プルプルしてたんは点滴の後遺症だったくま

費用

手術の種類、個人の病症により費用は異なりますが、おおよそ40~80万円で、手術はすべて健康保険が適応されますので、そのうちの3割が自己負担となります。

また、被健康保険者であれば高額療養費制度が適応されるため、加入者の世帯所得によって決まりますが、最高の負担金は87,430円(2022.9月現在)となります。

ですが、ほとんどの病院で入院中の差額ベッド代、食費や備品のレンタル代が別途必要になります。

高額療養費制度ー
高額療養費制度とは、月の初めから終わりまでのひと月間で、医療機関や薬局の窓口で支払った額が上限額を超えた場合、その超えた金額を国が支給してくれる制度です。…と言っても我々税金や保険料ですが。。

支払う上限額は世帯所得により変わり、最高で87,430円となります。

参考元・詳細:厚生労働省保険局

できることなら、入院~手術~退院まで、月をまたがないようにしましょう。

ウチは、月末近くの入院までに通院と検査、翌月1日に手術でしたから、2倍の費用がかさんだことを覚えています。

手術後の経過は

術後の経過は…

良くないです。

というのも高確率で形成手術が必要になるかもしれません。

なぜなら、帝王切開の場合、胎児を取り出せばお腹はへこみ切開した箇所も塞ぎますが、妊娠中の場合はお腹が膨らんでくるほうです。きれいに塞がらず、ミミズ腫れのような傷跡といつまでも痛がゆいのが残ります。

これを放置するとガンになるかもしれないというようなことをネットで見たこともありますので、落ち着いたら病院で診てもらいたいのですが、とてもとてもそれどころではなく、育児・子育てというのは落ち着くまでに月日を要します。

気がつけば手術から1年半ほどが経過、再診したところ、形成手術をしないと跡は消えないと告げられました。ただ、形成手術はすべて保険適用外とのこと。

通院で月1回の物凄く痛いステロイド注射を患部に打ち、薬剤が塗布されたテープを毎日張り替えれば、日にちと共に少しづつ傷跡も良くなるということなので後者を選びました。

手術から3年経過、傷跡はまだ少しミミズ腫れのように残っています。
ですが、痛みやかゆみはほぼなくなりました。見た目はちょっぴり悪いですが、日常生活には何ら支障がないくらいまでに回復、この傷跡を見るたびに当ブログで綴ったことを鮮明に思い出させてくれるのでした。

最後に

いかがでしたでしょうか。

このブログ記事が、卵巣腫瘍で手術される方、私たちと同じように妊娠中に手術される方の参考になれたのなら幸いです。

冒頭で『出産に立ち会い、入院から分娩までの想像を絶する凄絶な32時間』とありますが、よろしければこちらも一読ください。
【立ち合い出産旦那の本音】メリット・デメリットから流れまで!私の立会い出産体験談あり

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