「仮面夫婦」という言葉をご存知でしょうか。
私の両親も仮面夫婦でした。
両親のケンカが絶えなかった私の幼少・少年期。
母の怒鳴り声にキレる父、近ごろ見かけなくなった硬くて重いガラスの灰皿が飛び、窓ガラスや茶わんの割れる音を寝室の2段ベッド(昭和あるある。お兄ちゃんが上みたいな。)で耳を塞ぎながら寝ることもしばしば。
「何で仲良くしないんだろう。ボクにはお友達に優しくと言うくせに」
子どもながらに考えていたことを覚えています。
その他にも、ここでは筆舌し難い過去の経験があり、今となっては笑い話にできますが、その笑い話を妻や他人に話すと引かれるほど驚かれます。私としては、それが普通で当たり前であったため、そのリアクションを見ては楽しんでいるのですが。。
そのうちに、私の幼少期・少年期・青年期としての生い立ち、今現在の両親との関係を全4部作にてブログ記事に筆記したいと思案しているところ。そのタイトルは「コウノトリさんが運んでくれたのは毒親のもとだった件」とでも題しましょうか。
現在、私も子を持つ親となりました。
親バカで甘々な育児・子育てなので、息子の顔を見るたびに私の過去を憶い重ねれば、「まぁまぁ凄絶な幼少・少年期を過ごしてきたんだな」と、しみじみと感じずにはいられません。
もちろん、幼いながらも「両親の愛」というものをしっかりと感じとれていましたので、私の両親を非るわけではないのですが、私が、私と妻のもとに生まれてきたのなら、また違った人生になっていたかもしれません。
それは、息子の成長をアンサーとして楽しみにしましょう。
前置きが長くなってしまいました。
それでは、「なぜ仮面夫婦になってしまうのか」、「そのきっかけは」、そして「子どもはどう見ているのか」、「子どもに悪影響はないのか」、「子どものことを第一に考えたら離婚した方がいいのか」を、仮面夫婦の元で育てられた私の所見と見解を順を追って綴けていきます。
仮面夫婦とはどのような夫婦関係なのか
対外的には、夫婦として振る舞うので、人前では自然とコミュニケーションやスキンシップをとります。「仲の良い夫婦」を演じるため、親戚づき合いをしたり、子どもの行事や地域の社会活動、仲間内のイベントには夫婦そろって参加します。
周りからしたら「仲の良い夫婦」に見えますが、実態は伴っていません。夫婦の実態がないことを隠しているため、家庭内ではパートナーとして興味・関心もなければ助け合いの精神も愛情もありません。愛情がなければお互いに行動の制限もありませんし恋愛も自由。最低限の会話と家事さえすれば、あとは好き放題していても咎められることもありません。
ただ、「話をしない、顔も合わせない、一緒に食事をしない・つくらない、洗濯は別」とまで夫婦関係が悪化した家庭内別居とは違い、あくまで表面上は「仲の良い夫婦」であることを演じるという、同じ目的を持つパートナーであるという関係性で繋がっています。
仮面夫婦になってしまうきっかけ
男女が出逢い、月日を重ね愛情や信頼、絆を育み恋愛のゴールである結婚した当初は明るい家庭・笑いの絶えない家族、幸せになるんだと明るい未来に心を弾ませた結婚生活だったはず。
仮面夫婦を望んだわけではないけれども、いつしか愛情や助け合いの精神を失ってしまいます。
では、なぜ夫婦という仮面を着けてしまうのか、そのきっかけを見てみましょう。
・1 生活リズムのズレ
自分の生活リズムと配偶者の生活リズムが合わず、お互いの生活に干渉しなくなり、だんだんと興味・関心を失ってしまい、それに慣れてしまった結果、いつの間にか夫婦という仮面を着けてしまうケース。
例えば、仕事や子育て、親の介護などの事情で長い期間に渡り、夫婦それぞれの生活リズムが別々になってしまい、相手に相談や助けを求めたくても、そもそも生活リズムが別々なので相談したり助けを求めたりすることはなくなってしまい、期待することもやめてしまいます。
すれ違いが招く仮面夫婦の典型です。
・2 価値観の違い
結婚前の彼氏・彼女の頃なら、見えてなかったイヤな部分を四六時中生活を共にするようになれば見たくなくても見えてくるもの。
それもそのはずで、元は育った環境や考え方も違う他人なのですから、結婚して寝食を共にするうちに価値観の違いや性格が異なる点に気づきます。
夫婦であれば、歩み寄ったり話し合って問題を解消したり、価値観の違いや性格の異なる点を夫婦の絆・家族というもので少しづつ結び補っていくものですが、夫婦のコミュニケ-ションが不十分だったり、一方の歩み寄りの姿勢がなかったりすると、価値観や性格の違いをどうしても受け入れることができず、相手に対する愛情や信頼を失ってしまい、最終的に仮面夫婦となってしまいます。
・3 浮気や不倫
パートナーとしての尊厳をふみにじられる浮気や不倫といった行為。
どちらかが浮気や不倫をしたことをきっかけに相手に対する信頼を失い、裏切られたという苛立ちや焦燥感から愛情が冷め、離婚まで話が進むことも。
ですが、世間体や子どもへの影響、経済的な事情などを考え話し合ったうえ、離婚はせずに仮面夫婦を選択することになります。
離婚率
「3組に1組が離婚している」
1度や2度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
「3組に1組が離婚している」と聞くと、3組に1組は離婚するようなイメージかもしれませんが、実はそうではありません。
厚生労働省の人口動態統計によると、令和元年の年間の婚姻件数は59万9007組、離婚件数は20万8496組。離婚件数が婚姻件数のだいたい3分1となっています。
単純に数値だけをみれば約3分の1なのですが、注意しておきたいのは、令和元年に結婚した夫婦が令和元年に離婚するわけではなくて、令和元年に離婚した夫婦というのは、昭和に結婚された方・平成に結婚された方など、さまざまな年度に結婚した夫婦が含まれるということです。
「3組に1組が離婚している」という説は、同じ年の婚姻件数と離婚件数を比較したもので、実際に離婚した割合とは異なります。
ただ、離婚率は平成14年(2002)をピークに年々減少とのことです。
離婚するより仮面夫婦を選ぶメリット
「イヤなら我慢しないで離婚すればいいじゃん」、「夫婦を演じるくらいなら家族ごっこなんてやめてしまえばいいのに」と思う方もいることでしょう。
では、離婚ではなく仮面夫婦を選択するメリットを見てみましょう。
・1 経済面
仮に離婚した場合、司法統計によると、離婚調停・審判で離婚に至った夫婦の中で、子どもの親権は9割がた母親にあります。
社会保障が充実している日本といえど、女性が子どもを育てるために1人で働いて生活していくことは簡単とは言えません。
頼れる両親が健在ならいいのですが、高齢ならば育児と介護のダブルパンチになりかねません。
男性の場合、「養育費」というものを、子どもが経済的に自立できるまで(20歳とするケースが多い)毎月支払うことになります。相場は年収によりけりですが、2~12万円とまちまちです。
稀に養育費を払わない・踏み倒す方もいるようですが、人として・父親としての責務を果たすべきだと考えます
・2 世間体
夫婦関係とは、本来2人の関係なのですが、離婚をしてしまうと親戚や友人にイメージが良くないので体制を保つために仮面夫婦を選択するパターン。
・3 行動が自由
家庭内での決まりをつくり、最低限の事さえし、お互いに迷惑さえかけなければ、個人のペースで過ごすことが可能です。これは、お互いに夫婦以外のパートナーを持つことを認めている事になります。
どちらかに愛情があればそれは苦しみになりますが、発想の転換で、お互いに愛情はないけれど一緒にいることで利害が一致する場合、お互いに干渉することなく、プライベートを自由にすることができる、いはゆる「卒婚」というスタイル。
一緒にいる同居人としてルールを設けながら暮らせば、生活していく面では以外に楽に過ごせたり、助けが必要な時は助け合うことができたりもします。
・4 子どものために
場合によっては、子どもと離れ離れになってしもうケースもありますが、仮面夫婦でも婚姻関係にあれば子どもと一緒に過ごすことができます。
子どものことを第一優先して仮面夫婦を選ぶ方も多いようです。
幼少期の私から見た仮面夫婦とは
話は戻り…
ある夜、ひとしきりの怒鳴り声や罵り合いの後に、母が2段ベッドの上で耳を塞いでいた私にこう問いかけます。
「けん、お母さんとお父さんが別れたらどっちの子になる?」
幼いながらも、その言葉の意味は理解できました。
少しの間をあけ、私は「ヤダ!!」と号泣してしまいました。
母は何も言わず私を抱きしめ、「ヤダ、ヤダ」と言う私の背中をポンポンしてくれた後、何も言わずに父とのROUND 2に向かいます。
今憶えば、おそらく、母はこの時に仮面を着けたのでしょう。
仮面夫婦であっても対外的には良い夫婦を演じます。
私の父は背が高くて格好が良く、歌がとても上手で、地元のカラオケ大会で何度も優勝してるほど。
厳しくも、優しくおもしろく、友達に自慢の父です。
母も美人で歌も上手、陽気で気さくな人なので、「けんの母ちゃん、いいな」なんて、私の友達の評判も良い自慢の母でした。
そんな自慢の2人と離れ離れになるなんて、とても受け入れ難いことでした。たとえ仮面夫婦であろうと卒婚であろうと、どんな形でも2人と一緒にいたい、ケンカをしようがケガをしようが離れ離れになんかなりたくない!
そう想い・願いながら幼少・少年期を過ごしてきたのです。
今となっては、「過ぎ去りし日々」でしたが、当時の私には1日1日がとても長く感じずにはいられませんでした。いつまた「どっちの子になる?」なんて訊かれるのではないかとビクビクしながら毎日を過ごしていたのです。
子どものためにも離婚はしないで
仮面夫婦の家庭で育った子どもの場合、家庭で居場所がないと感じたり、両親に対して複雑な感情を抱いたりするようになると聞きます。精神的に不安定になったり、感情のコントロールがうまくできなくなるとか…。そして、親に関心を持ってほしいという気持ちから、問題行動を起こすようになるそうです。
子どもにとっては、「夫婦仲良く家庭円満で笑いの絶えない家族」というのが一般的にも理想であるとは思いますが、本当に「夫婦仲良く家庭円満で笑いの絶えない家族」というのが理想なのでしょうか。
私はそうは思いません。
なぜなら、世の中きれいごとばかりではないから。
いずれは親元を離れ巣立っていき、一人の人間として新しい家庭・家族を築き、子々孫々と繁栄していくそのプロセスにおいて、旅立ちの前に「苦」も経験しておく必要があるのではないでしょうか。
私たち大抵の方が、他人に親切で気遣いができ、思いやりがある性格の良い善人であると思います。ですが、親であっても大人であっても1人の人間です。人間である以上、家族や親しい友人に心を許せても、社会との付き合いでは損得勘定が働き、他人に言えない・見せたくない部分というものが多少なりとあると思います。ただそれが「多」なのか「少」なのか。
社会では当然のように厳しい現実が待っています。見たくないことも受け容れ、目を覆いたくなるようなことも直視しななければいけません。物欲のためなら周りを蹴落とし、金銭欲のためなら人を騙し・裏切り、我欲のためなら他者をきずつけることさえ厭わない。
「苦」という経験なしに社会に出た場合、そのような行為に直面した場合、精神に耐性がないため心に負うダメージは計り知れません。
失敗がなければ成功もない。苦しみがあるから楽しみがあり、喜びも理解できる。心の痛みを知るから他人に優しくなれる。そして、「苦」を経験し乗り越えてきたからこそ強くなれるのではないでしょうか。
人間の欲がもたらす卑しいところ・汚いところ、それらを少しでも見て受け容れ、自分で考えることにより感情をコントロールできるようになるのではないでしょうか。きれいなところも汚いところも全部ひっくるめて受け容れて大人になっていくのが成長ではないでしょうか。
そして、仮面夫婦を肯定するわけではないですが、現在の私がそうであるように、「自分はこうはなりたくない。夫婦仲良く家庭円満で笑いの絶えない家族をつくるんだ」と仮面夫婦の両親を反面教師とし、自分がされてイヤだったことは、自分の子どもにはさせたくないと心に誓うはずです。それこそが、家庭円満を築いていける第一歩ではないでしょうか。
まとめ
- 仮面夫婦とは、本来の夫婦とは実態が伴っていない夫婦のこと
- 仮面夫婦になってしまうきっかけは、生活リズムの違い・価値観の違い・浮気や不倫など
- 離婚ではなく仮面夫婦を選ぶメリットは、経済面・世間体・卒婚・子どものためなど
- 子どもからしたら、夫婦を演じても離婚はイヤだ
- 子どもとは、親や大人の良いところも悪いところも見て考え・受け容れ成長していく
- 子どもは、どんなことがあってもお父さんとお母さんしかいない
- 子どもは、何をされてもお父さんとお母さんが大好き
現在の両親
昭和の時代の夫婦であれば、一度は仮面夫婦の時期を経験しているとも言われており、仮面夫婦の行く末は熟年離婚ともよく言われていますが、ウチの両親の現在は、仮面を外し仲良くやっております。
母は、「今は夫が生きがいだ」と、それを聞いた父もニヤニヤと。。
頭をつかったり足腰のためにと夫婦仲良く一緒にお出かけしてるのだとか。
「仮面をつける」の「つける」は「着ける」を用います。なぜなら「装着」するからです。装着があるなら「脱着」もあります。そのマスク、そろそろ外してみませんか。
合わせて読みたい
「出たついで」といいますか、【1日1日がとても長く感じずにはいられませんでした。】と記した所があります。
私たちは、日々の忙しさから1年が〝あっ〟という間と感じている方も多いと思います。一日一日が早く過ぎると感じてしまっているなら、なにかもったいないなような気もします。
もし、「もったいない」と感じているならぜひ一読ください。なにかしらのお役に立てるかもしれません。
最後に
仮面夫婦の家庭で育った私の気持ちをなぶり書きにしてみました。
子どもにとって家庭というのは、本来、最も心安らぐ場所であるべきです。
ということを前提とし、
人は、仕事や育児・子育てに疲れたとき、椅子に座り背もたれにもたれかけ、一休みします。
大人は、人生に疲れたとき、タバコやお酒にもたれかけますが、子供がもたれかけれるのは親だけです。
その重みを感じたら、その場をスッと去るのではなく、しっかりともたれ返してあげてください。
言葉なんていらない。その行為がいちばん心のケアになるのだから。
では。
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